SAGAPIN STORY

佐賀牛ブランド40年の礎を守り次世代へ
技術と愛情でつなぐ中山牧場の想い

中山牧場 中山敬子 [東松浦郡玄海町]

INTRODUCTION
佐賀県東松浦郡玄海町は畜産業が盛んな地域。人よりも牛の頭数の方が多いと言われています。そんな玄海町で、たった1頭の牛とともにはじまった中山牧場の歴史。「気くばり、目くばり、心くばり」の管理を徹底し、技術を追求し、上質な佐賀牛を生産する姿があります。地域の畜産技術向上にも貢献しながら、未来を見据え、命を大切に、牛たちへ愛情を込めて歩み続ける中山牧場の挑戦をご紹介します。

「気くばり、目くばり、心くばり」で育む命の可能性

中山牧場のはじまりは、昭和43年のこと。私の両親がたった1頭の牛からスタートさせました。すぐにオイルショックなどの逆風が吹き、多額の借金を背負った時代もあったと聞きますが、それでも牛たちに愛情をかけ、いただく命を大切にしながら、歩みを止めることなく進んできた結果が今日につながっていると思っています。

現在は、約1900頭の牛たちを育てています。ともに働くスタッフたちの人数から考えるともっと多くの牛たちの飼育が可能ですが、一頭一頭にしっかりと愛情をかけるためには、これくらいの頭数がベスト。大切なのは、「気くばり、目くばり、心くばり」繊細な性格の牛たちに、なるべくストレスをかけないような管理を心がけています。

中山牧場では、自家繁殖とセリで落とした仔牛を育てています。約30〜40kgほどで産まれた仔牛にたっぷりと愛情を注ぎ、出荷する生後30ヶ月くらいには、約800kgにまで大きくなります。

手間と時間をかけたぶん、しっかりと育って出ていく牛たち。よく「かわいそうと思わないの?」言われることもあります。しかし、私は命の可能性をしっかりと引き出してあげることが畜産業の使命だと思っています。途中で怪我をしてしまったり、病気にかかってしまったりする方がかわいそうですよね。だからこそ、無事に育った牛たちをみなさんには存分に味わって欲しいと思うんです。命をしっかりと感じながら、おいしいお肉を楽しんでください。

磨いた技術と佐賀の稲藁が生む、至高の肉質

牛の生産に大切なポイントは3つあると言われています。まずひとつが血統。有名な種牛からは、高確率で高い評価を得られる牛が産まれます。セリではそんな血統に加えて、立ち姿や見た目も重要視しています。これは長年、牛を見続けていなければわからないポイントです。

そして、次は技術。その大部分を占めるのが牛たちの餌です。飼料は、輸入したものを食べさせていますが、その安全性や品質を確かめるために、アメリカまで足を運び現地視察することもあります。さらに、草食動物である牛たち欠かせない稲藁は、佐賀平野まで遠征し自分たちの手で調達します。秋の稲刈りが終わった田んぼをめがけて、玄海町から車で約1時間半の道のりをトラックで4往復し、稲藁を運ぶこともあるんです。栄養バランスの取れた飼料と肥沃な佐賀平野で育った良質な稲藁が、上質な肉をつくりあげるのです。

最後に大事なのが管理。清潔な環境を好む牛たちのために、毎日の清掃は欠かせません。スタッフも藁まみれになってフカフカの寝床を用意してあげています。近年では、畜産業界にもITの技術が導入され、見守りや管理も随分と省力化が進んできました。しかし、人の目で見つめることは、絶対に大切だと思っています。人間が注いだ愛情は、きっと牛たちに伝わると信じて、今日も牛たちに向き合っています。

佐賀牛40年の歴史をつなぐ、想いのバトン。

佐賀牛というブランドがはじまって40年が経過しました。礎を築いてきた父をはじめ、当時の生産者や関係者のみなさんのおかげだと思っています。その歴史は、2代目、3代目が繋いでいかなければなりません。

そんな想いから、中山牧場では畜産だけでなく、食肉加工直販も行っています。地元「唐津・玄海」の畜産農家が出荷した牛肉をセリ落とし、捌いて加工し直接お客さまへ販売する加工直販。切ってみてはじめてわかる肉の良し悪しがあるんです。自らの手で捌くことでわかる結果をもとに牛の育て方を工夫したり、他の畜産農家にもフィードバックしたりすることができます。そうすることで、産地としてのレベルアップも図っています。

その成果は、しっかりと肥育技術の向上につながっています。全国でも2番目に厳しい格付け基準の佐賀牛ですが、発生率は唐津・玄海地区において、82%(2023年)を記録しています。2013年が36.7%だったことを考えると、私たちのこれまでの取り組みが実を結んだようで、とても嬉しく思います。

しかし、畜産業界を取り巻く状況は、喜ばしいことばかりではありません。近年続く飼料や燃料費の高騰に加えて、後継者不足。廃業する農家も少なくないと聞きます。それでも、私たちは先人から受け取った技術のバトン、牛からいただいた命のバトンをつないでいかなければならないのです。中山牧場でも、次の50年、100年のために、娘や息子世代へこれまでの経験や想いを伝えているところです。どんなに時代が変わっても牛たちへ愛情を伝え、いただいた命を大切にするという想いは変わらずに、歩みを進めていきたいと考えています。

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