浮立面
主な生産地:佐賀
面に刻まれた豊かな表情と凄みに圧倒される
佐賀県の南西部に伝わる「面浮立」は、鬼面を被り、笛や太鼓、鉦(かね)のリズムに合わせて勇壮に踊る伝統芸能です。五穀豊穣祈願や雨乞祈願、奉納神事には欠かすことのできない踊りであり、この面浮立を踊る際に使う面を浮立面と言います。
その起源は1530年頃、神埼郡田手畷(佐賀県神埼市)で戦があった際に、龍造寺家の豪将、鍋島平右衛門が一族郎党とともに鬼の面を着けて戦い、勝利を納め、そのままの姿で踊ったことが始まりと言われています。
浮立面は地区によって表情が微妙に違いますが、いずれも阿吽(あうん)の面相を一対とします。口をぎゅっと閉じ、上歯で下唇を噛んだ「吽(うん)」の面相が雄面で、角が長く、額にU字の皺(しわ)があるのが特徴です。一方、大きく口を開けて舌を出した「阿(あ)」の面相が雌面で、角はほとんどなく、額にV字の皺(しわ)があるのが特徴です。浮立面の素材には佐賀県の県木である楠をはじめ、桐や檜などを使用しています。
現存する浮立面で最も古いものは、鹿島市飯田地区と矢の浦地区に残っている面で、推定250~300年前の作だと考えられています。当時は宮大工らが地元民から要請を受けて製作していたのではないかと推測されます。現在は鹿島市ある2つの工房にて3人の職人が技術を継承しています。
焼き杉でつくった木彫り兜
楠でつくる愛車の彫刻
全国的に製作が少ない菓子木型
特徴
浮立面は楠や桐、檜などの木を彫った面です。阿吽(あうん)の面相を一対とします。木目を生かして、丹誠を込めて彫った鬼の面は、美しさと凄みにあふれています。近年では魔除けとして家に飾られることが増えています。
阿呼(あうん)の面相は白木仕上げと漆塗り仕上げの2種類
面の構図を考え、直方体に切り取った木材に図面を引きます。全体の輪郭を描きながら、舌と鼻の形作りをします。次に眉と目の線を荒彫りし、最後に面全体をきめ細やかに仕上げ彫りします。熱で溶かしたロウを面全体に塗り込み、程よく乾いたら布で磨きます。毛を付けたら白木仕上げの完成です。
漆塗り仕上げは、仕上げ彫りをした後にペーパーで磨き、下地塗りをした後に漆を塗り、仕上げ塗りをして金箔を被せます。最後に毛を付けて完成です。