名尾手漉和紙
主な生産地:佐賀
300年の歴史が生む緻密な透明感
佐賀市大和町名尾地区に和紙が誕生したのは江戸時代中期。農民の納富由助が、耕地が少なく生活が困難であることを憂い、筑後溝口村で僧の教えを受け、農家の副業として村民に伝えたのが始まりです。
明治維新後、名尾地区の和紙は衰退しますが、1888年に生産者同士で名尾製紙組合を設立し、販路拡張に当たりました。1900年には地元の製紙業者の川浪正隆が名尾製紙養成所を設け、道具や機械の改良法や使用法を学ぶ場とし、生産力の向上を図りました。
そうした甲斐があり、次第に名尾地区は九州有数の製紙産地として知られるようになりました。その後は洋紙に押されて規模が縮小し、現在は名尾手すき和紙株式会社のみが伝統を守り続けています。
名尾手漉和紙の原料となる梶は自家栽培し、のりはトロロアオイの根を打ち砕いたものを使用しています。
名尾手漉和紙の特徴は、質が緻密で粘り強く、光沢があり、耐久性に優れていることです。特に提灯紙は油をよく吸収して絵筆が滑らかに走るため、「名尾の提灯紙」として高く評価されています。捉灯紙は和紙の厚みが均ーでなければ明かりを灯した時にムラができるため、大変難しい仕事です。
名尾手漉和紙の種類は、伝統的な草木染め和紙や草花を織り込んだ和紙、柿渋を施した和紙など様々で、約200種類あります。
草花を漉き込んだ便箋と一筆箋
ご朱印帳
ぼかし染めの扇子
特徴
質が緻密で色つやがあり、耐久性に優れた和紙です。原料の梶の繊維が長く、繊維同士が絡み合うことで強靭さが生まれます。提灯紙や障子紙をはじめ、民芸品やインテリア用品、建材や壁紙などの内装材にも使われています。
自家栽培した梶から原料を作り出す
栽培した梶を刈り取り、釜で蒸して、熱いうちに梶の皮をむきます。梶を天日干しして1年分を保存します。汚れを洗い流して水にさらし、釜で煮て柔らかくし、煮上がった梶を水に浸けて不純物を取り除き、棒で叩き、撹拌機で繊維状にします。 漉き舟(水槽)に原料と水、トロロアオイから抽出したのりを入れて調合し、箕桁(すげた)ですくい上げながら紙を漉きます。漉いた紙を重ねて板で挟み、圧力を加えて水を切り、紙を1枚ずつ板に張り付けて乾燥させて完成です。